求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 ……そうよね。だというのに、私はどうして、このセオドアでは嫌なのかしら。

「……どうしてかしら」

 万が一、お父様の借金がなくなり社交界デビューをしたとしても、私は求婚者を募ることになるし、セオドアならばそんな中で最高とも言える条件を持つ男性と言えるだろう。

 それなのに、私は彼では嫌だと思ってしまうのだ。

「ね? 断る理由はないんだよ。ここをすぐにでも辞めれば良い。働くことなんてしなくて良いんだから。ウェンディが困っていることは、僕がすべてお金出すんだよ?」

「……お断りします」

 一瞬、心が揺れかけたのは、弟リシャールのことがあったからだ。私がセオドアと結婚すれば、あの子の将来は明るいものになるかもしれないと思って。

 けれど、私は現在団長と契約結婚中で、困っていたところを助けて貰い、まだいつまでとも決めていない。セオドアと付き合って婚約して、ゆくゆくは結婚をという話には、頷くことは出来ない。

「おはようございます。副団長。ウェンディ」

「……おはよう」

「おはようございます」

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