求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 一人の竜騎士が挨拶をしつつ横をすり抜けて、廊下で立ち止まっていた私とセオドアはそれに答えた。

 私がアレイスター竜騎士団で働き出した当初は、恋愛禁止の規則もあり、どうせすぐに辞めてしまうだろうと思っていたから、ここで働く皆近寄らなかったのだ。

 けれど、今ではちゃんと挨拶をしてくれるし、食堂でもあからさまに避けられるということはなかった。

 徐々にではあるものの異分子が居るという緊張は解け、私もアレイスター竜騎士団の一員になれているようで嬉しかった。

「ウェンディ。君ってすっかり、アレイスター竜騎士団の一員になったみたいだね」

「嬉しいです……ここに雇って貰って良かったって、そう思います」

「……やっぱり、アレイスター竜騎士団を辞めて、僕と付き合おうよ」

「いえ。無理ですしせっかく苦労して一員になれたので、お断りします!」

 セオドアは何度断っても、諦めてくれない。

 というか、私に交際を断られることを、楽しんでいるのかもしれない。

 ……きっと、本来なら彼が交際を断られるなんてあり得ないし、それでも断っている私のことを、揶揄って楽しんでいるんだわ。


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