求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 私はアスカロンを床に降ろして部屋を出た。ここにジルベルト殿下が来るということは、団長に用があると言うこと……団長を何かで責めようと思っているということ。

 今、考えられるのは、この前のアスカロンが体調を崩した時のことだ。

 私は以前から、彼に一言言いたいと思っていた。どうしようもないことで、団長を責め立て……それは、子竜を育てる上で、避けがたいことだったとしても。

 私は子竜たちを育てる子竜守として、あれは仕方ないことなのだと、そう証言するつもり。

 それで不敬罪と言われてしまうのなら、甘んじて受けても良い。

 ……どうせ、私の家。グレンジャー伯爵家は没落し、貴族の身分を持つだけの平民になってしまっているのだから、何を恐れることがあるのかしら。

 やはり、以前と同じようにウォルフガングが居て、石畳の廊下のある場所で、ジルベルト殿下と団長は対峙していた。

「おい……よくも俺に、恥をかかせてくれたな」

「非常に心苦しく、申し訳ないと思っております」

「はっ……口だけなら、なんとでも言えるがな。どうするんだ。ユーシス。詫びの言葉なら聞き飽きた」

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