求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 つまり、言葉だけの謝罪なら受け入れないってこと……? アスカロンが風邪をひくかどうかなんて、団長にはどうしようもないことなのに。

 ……こんなの、酷すぎる!

 私が彼らの前に出ようとしたら、肩を引かれて振り返り、そこに居た人に驚いた。

「ジリオラさんっ?」

「やりたい事はわかるけど、ここはウェンディは何もしてはいけないよ。私はもう若くないし子どもも居ないけど、あんたにはまだ明るい未来があるからね」

 そう言ったジリオラさんは、ジルベルト殿下と団長が対峙している場に出て堂々と言い放った。

「子竜の体調なんて……私たち、子竜守にもどうしようもない。どうしようもないことで、臣下を責め立てるとご自分の品格を下げますよ。殿下」

「なっ……お前。イスマエルの妻、ジリオラか。子竜守の……」

 一瞬、とても険しい表情になったけれど、ジルベルト殿下は慌てているようだった。

 ……そういえば、ジリオラさんの旦那さんは亡くなってしまったとは聞いていたけれど、どんな人だったか……これまでに、聞いたことがないかもしれない。

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