求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
「それならば、これでお帰りください。イスマエルにも、救った命が人々を救う良い王族になったと思わせてくださいよ。あのユーシスは私の見たところ、王族の横暴に耐えているだけのように見えますよ。なのに、忠実な臣下であろうとしているようですがね」

「帰る」

 これは分が悪いと思ったらしいジルベルト殿下は短くそう言うと、その気配を察し首を低くしていたウォルフガングに飛び乗った。

 上空に彼らの影を見るまで、ほんの一瞬。すぐに遠ざかって行ってしまった。

「……ジリオラさん」

「あの子には、前々からこれを言ってやりたかったんだよ。あー……すっきりした」

 私が彼女に近付くとジリオラさんは、清々しい笑顔で言った。

「あのっ……亡くなった旦那さんって、アレイスター竜騎士団団長だったんですか?」

「おや。言ってなかったかね」

「聞いてません!」

「アレイスター竜騎士団は大昔に色々あって、恋愛禁止の規則が出来たんだが、結婚していたら別に良いんだよ。私たちもそうだったからねえ」

「そっ……そうなんですか」

 その時の私は目に見えて挙動不審になってしまったのか、ジリオラさんはにやりと微笑んだ。

「結婚してたら、良いんだよ。正式に結婚している夫婦は、揉め事も少ないからねえ」

 そして、こちらへと近付いて来る団長と私の二人を見比べて、楽しそうに笑った。


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