求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 そして、不思議とその光景が見えた。近くの草原、向かい合う二匹の黒い神竜、暴走したウォルフガング。ルクレツィアは、他の竜には結界を張るように命じ、ここには近寄るなと……。

「だんちょう……?」

 おかしいくらいに、怒り狂っていたウォルフガング……どうして、どうしてそんな事になったの?

 ウォルフガングに対抗出来るのは、同じ神竜のルクレツィアだから……必ず、あの場には団長が出ているはず!

 私が部屋を出ようとすると、アスカロンは叫んだ。

「駄目だよ! ウェンディ。お父さんとお母さんの争いに巻き込まれたら、死んでしまう!」

「……それでも、私は行かないと。私がそうなるなら、団長とジルベルト殿下だって……同じことなのではないの?」

 そう言った私は、答えを聞かずに走り出した。

 頭では危険だから、逃げた方が良いと思っている。私が行ったって、単に迷惑掛けるだけに終わってしまうかもしれない。

 けれど、どうしても……どうしても、私は行った方が良いと思った。

 たとえようもないほどの、この胸騒ぎ……伴侶が死んでしまうかもしれない、そんな時に、一人だけ逃げられる訳なんてないもの。


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