求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 ディルクージュ王国の貴族夫婦は不思議な力で繋がりお互いの危機には、胸騒ぎがすると言う。私があれを見たということは、団長に命の危険があるということ。

 開けた空間には、強い風が吹いていた。けれど、私が走って来た場所には吹いていなかった。

 これは、ここに居る存在が吹かせている風だということだろう。

 立ち止まって上空を見れば、そこには、大きな翼を広げた黒い神竜が二匹。

 お互いの動向を窺い、睨み合っているようだった。片方、少しだけ大きなウォルフガングは明らかに様子がおかしく、黒く雄々しい身体を取り巻いてるのはパチパチと光る白い稲光。

 ああ……暴走している。

 もう片方、団長を乗せたルクレツィアは、落ち着いているようだ。いくつか自分の前に、半透明な盾のようなものを置き、どんな攻撃が来ても良いように対処している。

 いきなり苦しげで悲しい咆哮は遮る物のない辺りに響き渡り、私の身体には嫌な予感が走った。

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