求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
29 約束
出席の準備をするだけで長い長い時間を掛けた、華やかな夜会は、瞬く間に時間が過ぎていく。
今夜社交界デビューする一人。グレンジャー伯爵令嬢ウェンディとして、私はお父様と一緒に入場し、まずは白いドレスを着たデビュタントとして、王家の男性たちと踊る。
あの件で、第二王子ジルベルト殿下は流石に会場には居なかったけれど、王太子シャルル様と第三王子ニコラ様、それに王弟ジェローム様の三人が出て来て、次々に今夜デビューした貴族令嬢たちと踊った。
私はシャルル殿下と踊ったのだけど、良く似た弟ジルベルト殿下とは全く違い、とても紳士的な方だった。
それに、弟が引き起こしたあの一件に関して、問題を重く見た王家では独自にあの問題を色々と調査していて、私が子竜守を勤めていてアレイスター竜騎士団に居たことも知っていた。
シャルル様から直々に謝罪を受けた事は驚き過ぎて、あまり覚えていないけれど、とにかく初めての夜会は緊張感もあり、父からの紹介で何人かの紳士と踊り、夜会の時間はめまぐるしく過ぎて……それに、私はある人を、目でずっと探していた。