求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
「そっ……それは! あの……誰かに見られてしまうと、私たちの関係を誤解されてしまいます」

 夜会で『熱くなって来たわ。冷たい風を受けたいから、バルコニーに行きましょう』は……そういう意味なのだ。

 恋人たちが抱きしめ合い、熱く語らう……そんなバルコニーで私と団長が居ることを見られてしまえば、恋愛関係にあると思われてしまってもおかしくはない。

「別に良い。俺たちは、夫婦だろう」

 団長はなんでもない事のようにそう言ったけれど、私は戸惑ってしまった。だって、これはお互いに利害が一致したから、一時だけの契約結婚だと思っていたからだ。

「けど、それは……必要があって、したことです」

 団長の整った顔がほんの少ししか離れていなくて、とても平静でなんて居られない。私がしどろもどろでそう言えば、彼はますます楽しそうな表情になって言った。

「実は、ウェンディの父上にも既に事情を説明して、結婚する許可を貰って来た。そのドレスも、装飾品も、俺が用意していたものなんだ。今夜のことも、協力してもらった」

「……えっ……?」

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