求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
「まあ……! セオドアはオブライエン公爵家の方でしたか! 大変、失礼しました。私は社交界デビューもまだで、あまり皆様の顔も知らず、本当に申し訳ありません」

 オブライエン公爵家は王家に近く、古い歴史を持つ高位貴族だ。公爵家の名を持つ彼の顔も名前も知らず、粗相をしてしまったと慌てた私にセオドアは苦笑した。

「いえいえ。僕も社交界にはあまり顔を出さないですし、ウェンディが顔を知らなくて当然です。社交界デビュー前ですか……すぐに良き縁談が決まりそうだったのに、残念でしたね」

 セオドアは非常に心苦しいと言わんばかりに胸に手を置いたけれど、私はその言葉に首を横に振った。

「いえ……なかった未来を悔やんでも仕方ないですわ。無意味ですもの」

「……おや。なんだか、僕の思っていた方ではなかったようですね」

 私がはにかんでそう言えば、セオドアは顎に手を当てて言った。

「……え?」

 真顔で彼が言った言葉の意味を、理解出来なかった私は不思議に思い首を傾げた。

「いえ。何でもありませんよ。それでは、ウェンディの職場へと案内しますね」

< 26 / 215 >

この作品をシェア

pagetop