求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 あまりの衝撃的な悲劇が起きて面変わりしてやつれ、別人ではないかと思うくらいに憔悴してしまった現グレンジャー伯爵。私の父、ジョセフ・グレンジャー。ひょろ長い身体を持ち、いつもは整えた髭がなびいている顔も手入れが行き届かずに、今ではだらしなく無精髭が生えてしまっていた。

 まだ、十四という年齢で、私たちがこれからどうなるのかが想像もつかないだろう弟。リシャール・グレンジャー。貴族学校では模範生だというリシャールは、幼く可愛らしい顔を持ち、さらさらしている髪は肩まで伸びて、後ろで黒いリボンで結わえていた。

 私たちグレンジャー伯爵家は家族全員が、銀色の髪に水色の瞳を持っていた。

 そして、私。ウェンディ・グレンジャー。美しい母に良く似ているとは褒められてはいたけれど、これからはそれは何も意味もないものになってしまうだろう。

 だって、私は名ばかり貴族になって、働き生きて行くしかないのだから。持参金も用意出来ないのに、貴族令嬢が結婚することを望むなんて出来るはずない。

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