求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 もしかして……あの人が、今の子竜守……? ジリオラという人の後釜を探していたと、先ほど団長とセオドアは言われていたけれど……。

「ウェンディ。君も知っているように、貴族には竜力があり、竜は竜力を持つ者にしか触ることが出来ません」

「あっ……はい」

 彼の言葉を聞いて私は思わず、左胸の上に手を当てた。そこにはグレンジャー伯爵家の紋章があり、私がこのディルクージュ王国の貴族である、竜力を持つという証だからだ。

「子竜守はそういった訳で、貴族の血を引く女性……ジリオラも貴族出身の女性なんです。もちろん。貴族であるならば裕福な女性が多く、彼女のようにこうして身を粉にして働くことが好きな変わり者はそうは居ません……ジリオラ!」

 セオドアは彼女の名前を大きな声で呼び、ジリオラさんは私たちが居る方向を見て、荷台に載せていたミルクの入った硝子瓶を子竜たちにすべて渡してから、こちらの方向へと近付いて来た。

「セオドア! ……この子は?」

 はきはきとした喋り方のジリオラさんは、はっきりとした目鼻立ちで、濃い青の瞳がやけに綺麗に見えた。

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