求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 静かにそう言ったジリオラさんは、扉を開いて出て行った。

 ……あんな事を言われたとしても、ジリオラさんは何も返しようがないかもしれない。

 騙されて無一文になった父親に置いて行かれた娘に掛ける言葉なんて、私自身にだって思いつかないもの。

 誰かに何を言って欲しいなんて、何もない。ただ、私にとっての事実が、誰かから見れば可哀想な身の上であるだけで。

 なんだか……気を使わせてしまった。

 いけない。私がここで弱気になるなんて。頼み込んで、働かせて貰っているというのに。

 私はもう誰にも頼れないんだから、お世話になるジリオラさんに弱音なんて吐かずに、しっかりしないと……。

 私は寝巻きへと着替える気力も湧かずに、用意されていたベッドへと潜り込んだ。その瞬間、固くて冷たい寝床だと思った。

 これまで睡眠を取ってきたベッドとは、全く違う。

 けれど、極限にまで疲れていた私は、瞼を閉じた数秒後には、深い深い眠りの中へと落ちていた。

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