求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

07 去って行く人

 子竜守の仕事には、ゆっくりと出来る休日なんてある訳がない。

 私たちが食事を与えなければ弱って死んでしまう子竜たちのお世話を仕事にしているのだから、当然のことだけど。

 けれど、三十年ほど子竜守をしているジリオラさんに言わせると、これは一年の中で孵化してからの二ヶ月程度だけのことのようで、私は子竜守で一番大変なところを最初に体験してしまっているらしい。

 竜には春に繁殖期があり、産んだ卵を人へ預け、温める専用の特別な毛布に包み孵化するまでひと月。

 そして、人で言うところの乳児に近い状態の二ヶ月を終えて、飛行訓練へと入り、彼らが飛べるようになればアレイスター竜騎士団の成竜の群れに入るために巣立って行ってしまうそうだ。

 私は竜たちが次々に孵化していた時にここで働き出したので、一番大変な時だったと理解出来る。

 子竜たちは、とても可愛い。本当に可愛いけれど、幼い生き物を育てるという事は、とてつもなく根気の要る大変なものだった。

 大抵の場合、子竜は食事用に用意されているミルクを飲んでくれるのだけど、たまに味に飽きてしまって、食事自体を拒否してしまう子竜も居る。

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