求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 けれど、今ではもう化粧をしない事に慣れてしまっていた。それに、化粧していると繊細な鱗を持つ子竜に頬擦りが出来ないので、それはそれでちょうど良いと思い納得していた。

「ウェンディは真っ直ぐな銀髪も綺麗だけど、長いと大変だよね」

 私は社交界デビューに向けて、伸ばしていた髪を高い位置でひとつに纏めていた。そうすれば邪魔にはならないけれど、長いと髪を乾かすまでに大変なので切っても良いかもしれないと思っていた。

「そうですね。仕事にも邪魔だから、切ろうかしら」

 私の髪色はとても珍しいらしい。無一文になり古着屋を出て王都を歩いていると、自分に髪を売ってくれないかと言っていた商人も居た。

 グレンジャー伯爵家は先祖代々この髪色で良く褒められたものだけど、今ではもう無用の長物なのだから、切ってしまっても良いかもしれない。

「良いね。似合うと思うよ。肩くらいにする? 僕好みだな」

「……おい。適当な男の口車には、乗らない方が良い」

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