求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 私は竜に特別な竜が居るなんて、これまでに聞いたことはなかった。もっとも、竜の情報はあまり出回らない。ディルクージュ王国は複数ある竜騎士団で守られていて、国防に関することだからだろうと思う。

「ああ。そうだ。古代神の力を受け継ぐという、神竜。その末裔は、このディルクージュ王国にも何匹か生存していてね……王族、王家に近い貴族の竜騎士にのみ、神竜に試されることが許され、許された竜騎士は神竜を自分の竜とすることが出来る」

「なんだか、すごいですね。まるで、お伽噺の世界のように思えます」

 物語の中の出来事のようだけど、これは実際に起こっていることなのだ。

「もちろん。普通の竜と同じように、神竜だって卵を産むんだよ。神竜の子は子竜でも持っている力が、あまりにも強過ぎるんだ。育てば制御することを、だんだんと覚えていくんだけどね。だから、万が一を心配して他の子竜たちとは離して、ここで一匹だけ隔離しているんだよ」

 ジリオラさんは竜舎の中にあるひとつの扉を前にして、不意に立ち止まった。

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