求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 そこは私はこれまでに入ったことのない部屋なのだけど、ジリオラさんは作業をしている様子もあったから、必要なものが置かれた物置か何かなのだろうかと思っていた。

「あの、ここに、その神竜の子竜が居るんですか……?」

 私の質問に、ジリオラさんは苦笑してから頷いた。

「そういうことだよ。あんたも私の後継者で子竜守として生きていくなら、これから神竜の世話をすることもあるだろう。もっとも、神竜は個体数も少ないし、神竜の雌に選ばれた竜騎士が居る場合に限るから……可能性は少ないかもしれないけどね。なんでも経験しておくに、越したことがないと思ってね」

 そう話しつつジリオラさんは重い扉を開き、室内に居た誰かの存在に気がついたようだ。

「おや。ユーシス。また来ていたのかい。なんだか……あんたがまるで、父親みたいだね」

 私が彼女に続いて部屋の中に入ると、そこに居たのはいつものような騎士服でもなく、出勤前なのか珍しく私服のカートライト団長だった。

「……自分の竜の子どもだぞ。空いた時間に見に来て、何が悪い」

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