求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 信じていた人にすっかり騙されてしまい、ここ一週間で身体が半分になってしまったのではないかと思うほどにお父様は憔悴していて、元々はふっくらとしていたはずの頬はこけ、人相は様変わりしてしまっていた。

 けれど、捨てる神あれば拾う神ありという言葉は本当のようで、お父様がこれまでに信頼関係を築いていた友人たちから、かなりの金銭的援助は受けることが出来た。

 お父様は人が良く信じやすく悪い人から騙されやすい代わりに、周囲の人から愛されるという才能を持っていた。

 そして、借金はある友人に代表して一括して支払ってもらい、彼の援助を受けて今まで通りの生活で貴族として生きて行くという道もあったと思う。

 けれど、父自身がそれをきっぱりと断り、一旦すべての財産を売り払って、友人にのみお金を借りて、それを返していくことを選んだのだ。

 先方は生活資金を貸してくれると言っていたというのに、ずるいことが出来ないというのも真っ直ぐな性格の私の父らしい。

< 6 / 215 >

この作品をシェア

pagetop