求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 どこまでも上手くやれない人だけど、だからこそ崖っぷちの窮地にあっても、たくさんの友人に助けて貰えたのだ。人の長所短所は、一長一短なのかも知れない。

 本来ならば、私だって身売りしなければならなかったところだったのに、その方のおかげで助かった。

 それに、成人ではないリシャールについては、貴族学校の学費や生活費を肩代わりしてくれると約束してくれた。お父様も弟の教育費用に関しては、断り切れなかった。

 家族三人の命も残り、跡継ぎである弟の未来だって、台無しにはならなかった。

 そんな奇跡的な事実に、神に感謝する。もちろん、お金を工面してくれたというお父様のご友人にも。

 けれど、我がグレンジャー伯爵家は全てを売り払い、これからは借金を返すために働いて、名ばかり貴族として生きていくことになった。

「二人ともすまない。本当に悪いことをしてしまった。今は爵位だけはある状態だが、私はこれから借金させてくれた皆に金を返すために、景気が良いと聞く異国に渡り、どうにかしてお金を稼いで来る!」

 ええ。その通りだわ。借りたお金と恩は、いつか返さなくては。

「もちろんよ。お父様。私も協力して……」

 借金を返すために働くわと続けようとした私の言葉を遮り、こうしなければと思い込んでしまえば誰にも止められない性格のお父様は、高らかにそこで宣言をした。

「ウェンディ。リシャール。父とまた会う日まで、どうか生き抜いてくれ。グレンジャー伯爵家……一旦、解散!」


< 7 / 215 >

この作品をシェア

pagetop