求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
「ああ……ウェンディ。ルクレツィアは、君は守らなければならない存在だと言っていて……」

「えっ……団長。竜が何を言っているか、わかるんですか!?」

 私は当たり前のように、竜ルクレツィアの言葉を伝える団長に驚いてしまった。私には何も聞こえなかったのに、団長には聞こえる声があるということ?

 驚いた私に驚いてしまったのか、団長も目を見張りながら頷いた。

「ああ。竜力が強いと、竜と通じ合う力も強くなる。自慢ではないが、俺は竜力だけは強いからな。ルクレツィアやアスカロンの言葉だって、聞こえてくるんだ」

「アスカロンもというと、子竜も……? すごいです。とても、羨ましいです」

 ということは、私が今世話をしている無数の子竜たちの言葉も、団長には理解することが出来るのだ。

 あの子たちのキューキューと可愛らしい鳴き声を聞くと心が和むけれど、たまに何を欲しているのかわからなくて困ってしまうことがある。

 食事を拒否した時だって、どんな味のミルクなら飲むと言葉で教えてくれれば良いのにと、思ったことは幾度もあった。

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