求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 なっ……何? いきなりだったから、何か言ってはいけないことを言ってしまったのかもしれない。

「ウェンディ。君においでと言ってる」

 団長の表情は、いつになく優しい。自分の竜ルクレツィアを、とても大事に思っているのだろうと思う。

「あっ……え?」

 ようやく彼の言葉の意味を理解した私は、どうしようと戸惑ってしまった。だって、竜力がある者は竜に触れられるとは言っても、成竜になれば自分の竜騎士くらいにしか触れさせないと聞いていたからだ。

「大丈夫。君には……ああ。安心して欲しいらしい。触ってあげてくれ」

 私は恐る恐る近付き、羽根を上げた前足あたりを触った。

「ありがとう……ルクレツィア」

 その時、ふんわりと大きな翼膜が私をくるりと覆い、ルクレツィアが私の全身を抱きしめてくれたのだと思った。

 ああ。温かい……そして、とても優しい抱擁で、安心出来る。ただそれだけだけど、私のことを心配してくれていると思えた。

 不思議だった。

 たった一人になってしまってから、私が眠る時は、仕事に疲れて泥のように眠っているだけだ。

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