求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 こんなにも可愛い存在が、共に過ごしていたここから居なくなってしまうと思うと、考えただけで寂しくなってしまうけれど、まだまだ大変なお世話が必要なことには変わりなかった。

 私がいつものように古くなった寝藁を片付けていると、キュウキュウと数匹の子竜が鳴き声を出し、一匹の子竜を彼らが取り囲んでいるのが見えた。

「あら……どうしたの?」

 不思議に思った私が近付くと、ガタガタと目に見えるほどに震えていて、周囲の心配そうな鳴き声を出している子竜たちは、その子をどうにか温めようと、懸命に自分たちの身体を押し当てていたのだった。

 今まで……こんな風になった子竜を見たことはなかった。あまりにも焦ってしまった私は、別の柵の中で作業をしていたジリオラさんを呼んだ。

「ジっ……! ジリオラさん……っ!! 大変です!!」

「どうしたんだい?」

 ジリオラさんは私の居る場所からかなり距離があるので、この異常事態が見えず、のんびりとした口調で答えていた。

「子竜が! 身体を震わせています!!」

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