求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
「ああ。昨夜は急に気温が下がったから、藁から身体を出していた子が風邪をひいたんだろう。他に移ると良くないから、隔離するかね」

 私の悲鳴交じりの声にも、のんびりとした口調でジリオラさんは平然と答えて、こちらへと近付いて来た。

 そんな私はというと、彼女の落ち着き振りを見て、動揺してしまった心が落ち着いてきた。

 ……え? 風邪をひいた……だけ?

 今すぐに子竜の命に危険があるような、そんな状況でもないということ?

 ジリオラさんは心配そうに取り囲んでいた子竜たちの中から、ガタガタと震えている子竜を抱えて、額に手を当てると嫌な表情をしていた。

「おや。かなり、熱が出てしまっているね。呼吸も荒そうだ。今夜は徹夜かねえ……」

「あ、あの……竜って、風邪をひくんですか?」

 私は恐る恐る、ジリオラさんに聞いた。当たり前のように風邪を引いたらしいって言うけれど、竜が風邪をひくという事実が、私の中で当然のこととは思えなくて。

「なんだい。竜が風邪を引いちゃおかしいのかい?」

「い、いえ。これまでに、風邪をひくと知らなかったので、驚いただけです……」

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