求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。

02 行き先

「……姉様。姉様」

 私の手を引いている弟リシャールの声が遠くから聞こえて、はっとして我に返り私は頬に手を置いた。

「ああ。リシャール……いけないわ。ごめんなさい。私ったら、お父様が家族解散宣言をした白昼夢を見た気がしていて……」

 そんなことあり得ないわよねと苦笑いをして、私より少し背の低いリシャールを見つめれば、彼は大きく息を吐いて首を横に振っていた。

「残念だね。姉様。それって、白昼夢でも何でもないから。ただの現実だよ。父様は既にグレンジャー伯爵邸……いや、もう元グレンジャー伯爵邸から、出て行ってしまった後だよ。僕らのことは何も考えず自分のことだけは準備良く、港へ行く馬車も手配していたみたい」

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