求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 本来ならば飲むべき量より少なくて良いのは、特別に濃く調合しているらしく、そうしてもらわなければ達成不可能だったことは間違いない。偉大な先人たちの知恵で、乗り越えることが出来た。

 そして、呼吸も楽になり震えも少なくなっていた子竜は、安心しきって私の木綿のスカートを掴んで、むにゅむにゅと寝言を言っていた。

「……可愛い。大好きよ。体調が良くなってよかった。あなたが健康に何もなく育ってくれたなら、私はそれが一番嬉しいわ」

 頬を指でつつくと、むにゅむにゅと幸せそうに何かを言っていた。

 ……そう言えば、竜力の強い団長は、ここでこの子竜が何を言っているかをわかるんだわ。

 それを、とても羨ましいと思う。何度も吐いて嫌がっても、どうにかミルクを飲んでくれて、こんなにも頑張ってくれたのなら、何かをしてあげたい。

 もし、何か望んでいるのなら、それを叶えてあげたい。

 私が眠れずに大変な思いをしたことなんて、全部全部どうでも良くなるくらいに、この子は本当に可愛いもの。

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