求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 だから、私が仕事中に倒れてしまって何かあれば、責任を取ることになるのはあの人なのだ。

 自分がどうしてもやりたいからと、我を通してやってはいけない事だった。

「まあ、仕事にやる気はあるのは、大いに結構だけれどね……という訳で、ゆっくり眠ってから食事を取っておくれ。あんた竜騎士団に入った時期も悪かったし、ここに来てからというものの、まともに休みがなかっただろう」

「あ……ありがとうございます……」

 不意に眠気を感じて欠伸をして反射的に目を擦ってしまった私がお礼を言うと、ジリオラさんは何も言わずに片手を振って、部屋を出て行った。

 ここ一ヶ月半ほど子竜守を始めて深夜と早朝にミルクを与えなければならないために、睡眠は四時間取れれば良い方だった。

 そして、日中はあれこれと子竜守の仕事を済ませていたら、時は流れるように過ぎてしまう。

 張り詰めていた緊張の糸が切れてしまったのか、強い疲労を感じた私は子竜が使っていた寝藁の上に腰掛けて、ほんの一瞬だけ目を閉じようとした。

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