求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 実はジリオラさんが『これまでも出来ていたし、自分一人で出来るから、大丈夫』と言ってやっていただけで、荷物の運搬など子竜に直接関わらない部分は、竜騎士たちに手伝って貰っても大丈夫らしい。

 団長は私が団医を呼びに行った時に、偶然すれ違って挨拶しただけで事情も説明していないのだけど、ただそれだけでこういう差配もしてくれるなんて仕事が出来る頼れる上司だ。

 そんなこんなで私は二日間を無難にこなし、明日になればジリオラさんも復帰出来るだろう……と思われた日、私がアスカロンの部屋へ入ると、そこには団長がいた。

「団長。お疲れ様です」

 その時、彼はアスカロンの頭を撫でて何かを言っていたようで、私の声に気がつき振り向いた。

「ああ……ご苦労様。ここ何日か、大変だったようだな」

「ジリオラさんも大変みたいでした……部屋の中にあるトイレにも、這って行ったらしいです」

 私を呼んで貰えれば手伝うと言ったのだけど、ジリオラさんは頑なに『そんな世話をされるような年齢でもないから』と、あんな状態でも自分の身の回りのことは自分でしたがった。

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