求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
「ジリオラは、融通の利かない頑固な性格だからな……俺たちも新人だった頃からあの人を知っているけど、変わらないよ。ずっとあのままだ。若い頃もそうだったんだと思う」

「そうなんですね……」

 私はアスカロン用に用意していた硝子瓶を取り上げ、いつものように喉奥にまで飲み口を突っ込んだ。両手で瓶を持ったアスカロンは、こくこくと喉を鳴らしてミルクを飲んだ。

「慣れたものだな……君がここに来てから、まだふた月も経っていないが」

 私がミルクをあげてすぐに寝藁の清掃を始めたのを見て、団長は言った。雇ってもらい仕事なんかしたこともなかった私も仕事の段取りを覚えて、何かを待って居る時間を使って、次の工程に入ることを覚えていた。

 毎日四回数十匹の子竜たちにミルクを与えているので、慣れた手付きになってしまうのだって当然のことだった。

「……最初はどうして良いものかわからず、戸惑ったものでしたが、ようやく慣れて来たみたいです」

 振り返って苦笑した私はその時、持っていた藁をかく大きなフォークを持っていた手を滑らせてしまった。床に当たりカンと高い音がしていけないと思った。

< 94 / 215 >

この作品をシェア

pagetop