求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
 彼はまだまだ子竜で、ミルクを必要としている……なのに、こんな風に繭に閉じ籠もってしまうなんて……私が、私が大きな音を鳴らしてしまったから……?

「ウェンディ。落ち着くんだ。これは、君が悪い訳ではない。俺が仕事中に話し掛けたからだ。落ち着け」

 団長は私へと近寄り、腕にある傷を見て眉を寄せた。

「深いな。すぐに治療させよう。傷が残ってはいけない」

「けどっ……! けど、ああ……どうしよう。また、食事がっ……」

「おい!」

 私は動揺して恐慌状態に陥りそうになったけれど、団長は怪我をしていない腕を掴んで私に顔を近づけた。

「おい……俺の言葉を、良く聞くんだ。ウェンディ。アスカロンは先ほど、君に渡されたミルクをほぼ飲み干していた。だから、床は塗れていない。それは、わかるな?」

 私は団長の言葉を聞き、床を見た。寝藁も濡れていないし、床にも液体はない。だから、割れて飛んだのは空になった硝子瓶だけだった。

「……はい」

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