短編集
双子
兄貴の分と一緒に、購買部へパンを買いに行く。
「…ん?乙姫??」
校舎の影にチラリと見えた。
パンを抱え、行ってみる。
怒鳴り声…
「無関係だって、言っているでしょう?トリに訊きなさいよ!私じゃないわ!!トワだって、嫌いなのよ!」
【ズキッ…】
「乙姫…俺の事、嫌いなの?」
俺の姿を見た数人が逃げる。
残った乙姫は、不機嫌のまま…
「良い?トワ…あなたを好きな人が沢山いる。トリが黙っているのは、これと同じなの。私が幼なじみだと言うだけで、イジメにあうように…彼女は、もっと嫌な思いをするの。」
イジメ…?
「それは、俺達の所為?」
俺の質問に、悲しそうな表情。
「…違うわ。でも…現実なの。」
理解できない何かに、動けなかった。
乙姫は、俺を残して校舎の方へ走って行く。
…『話しかけないで』『何故言わないか…』
頭に、グルグルと…同じ言葉。
「トワ?ここにいたのか…犬のようなお前がすぐに戻らないから、何かあったと…どうした?」
「…兄貴…俺、どうしたらいい?」
涙も出ない…悲しみ…
「座れ。まずは、腹に入れようぜ。」
紙袋を俺から取り上げ、お互いに好きなパンを分ける。
兄貴は、甘系…チョコ・メロン・シュガー。
俺はボリューム重視。カツサンド・やきそば・コロッケ。
「兄貴の彼女は、どんなタイプなんだ?」
「…ふっ。くくく…案外、似てるかもよ?」
意地悪な顔…飲み物は、二人とも同じブラックコーヒー
似ている…?
『彼女は、もっと嫌な思いをするの。』…まさか…
「そっか…気づかなかったや。うん、兄貴になら…いいか。へへっ…俺、調子悪いから帰る。」
あのムズムズは、恋心…
気づいたと同時に失恋。
周りが見えないのにも、ほどがある…情けない…
頭の使い過ぎなのか、家に着いたと同時。
熱で倒れた。