短編集
堕女神の工程
悪魔のささやき…
加菅 浩大(かすが こうだい)
高校一年生。健全な?普通の男だ…。
「秋…?何、して…るの?」
俺は、今の状況がつかめず秋…
幼馴染の伊住院 秋桜(いじゅういん あきお)に尋ねた。
ここは俺の部屋。
床に寝転んで、転寝から目覚めたところ。
その俺の上に、秋がいる。
長いふわふわの髪が、俺の頬に掛かっていい匂いがする…夢じゃない。
「え…?うぅ~~ん。夜這い…?」
夜這い??
秋は、考えながら…あれ?とか…呟いている。
何か…劇の練習?だろうか…
「あの…さ。まだ、昼だよ?…とっ。」
俺は、軽い秋の体を持ち上げながら起き上がる。
感じないわけではないが、まだ…幼馴染。
しかも、こんなことをする女の子じゃない…??
今思えば、あの頃からだった…
時は、中学時代にさかのぼる。
秋の家は、道をはさんで向かいにある。
その道が校区をわけ、中学は別だった。
だから、秋の中学時代はよく分からない。
たまに顔を合わせ、話をしたが…
毎日一緒にいた小学校の時に比べると、疎遠に近い状態だった。
秋の中学の様子を見たのは、合同体育祭。
中学3年から、少子化でその企画が通った。
やっぱり、可愛い…
俺たちの中学の男共の心を、すべて奪った。
『天使…』『いや、女神だ!』と。
怒る女子の声なんか、耳に入るわけも無く惨敗だった。
高校が同じだと知って、どれほど嬉しかったか。
ほんの少しの時間が、君を変えた…高校入学当初。
彼女と同じ中学の奴は、目を逸らし言う。
「堕女神。知らない?悪魔の手に落ちて、誰も近づけないんだ!…くふくふ…」
秋と、一緒にいる…女の子?
結構、綺麗な顔をしているし、幾人かクラスの男の視線が注がれる。
悪魔?…意味がわからないけど…。
考え事の途中の俺は、そのアクマな彼女に声をかけられた。
「ね、あなた…DT?」
……。
「へ?」
今、DT…って…言った?この顔で??
俺の驚いた顔に、ニヤリ顔。
「ふぅ~~ん。何人か、喰っててそうなのに。」
いきなり、秋の方に向かって叫ぶ。
「コスモス!こいつ、ヤッ…むぐっ」
慌てて、悪魔の口を塞いだ。
信じられない。今、こいつ…秋に『ヤッたことない』って叫ぶつもりだった?!
「なっ…何を、教室…ここ、教室…ぎゃっ!!」
悪魔は、口を押さえていた手の平を舐めた。
しかも、効果音は…可愛い“ペロッ”じゃない。
…こう…ベロ~~リ…??