短編集
手を離し、不思議なものを見た…という顔の俺に、舐めた舌を出したまま…ニヤリ。
アクマ…確かに、悪魔だ!!
それから、何故か3人でいることが増えた。
秋…どうして、このアクマと一緒にいるんだ?タイプが全く違う…。
俺と離れていた間、何があった?
「え?私から、友達になってもらったの!」と、嬉しそうに言う。
女神の微笑みで…
悪魔…大園 恵理夏(おおぞの えりか)に毒されているのか…
「呼んだ?」
恵理夏、登場。
「…召喚した覚えは無いぞ?」
極端に嫌そうな顔した俺。
それを嬉しそうに、笑って受け止める。
「困るわ。契約して…その、魂でいいわ。」
恵理夏が言うと、シャレにならないセリフ。
黒髪が腰まで、サラサラ…。綺麗な顔で、性格は最悪…親父が入ってる。
この女になら、殺されてもいい…なんて、男がゴロゴロ。
頭、おかしいんじゃないか?
「よし、圭太…お前、命やれよ。魔界に帰りたいって!」
前の席で、パンに噛みついたところの圭太(けいた)。
突然、話題を振られたのに「はい!喜んで!」と。
マジかよ。圭太の目は、…ハート?
どこかを見ている。決して現実ではない。
呆れて、ため息が出る。
そんな俺に、恵理夏が近づき「コスモス。女にさせてやろうか?」と、耳元で囁いた。
昼休みにする会話じゃない。
「ぶっ…」
しかも、口に含んだお茶を吹いてしまった。
「汚いわね~。あぁ、コスモスを…濡らしたいのか。」
いちいち、エロく聴こえるのは…俺がお年頃だからじゃ…ないよな?
「汚すのは、夜だけにしろ?」と、ニヤリ。
「……。」
悪魔と言うより、下品な親父だ…。
「おかずは、タダ…。あぁ、私でもいいぞ?ふふっ。相手してほしかったら金だしな。」
ふっ…と、俺の耳に息を吹きかける。
【ゾクッ】
耳を押さえ、恵理夏を押し退ける。
そんな俺たちをマジマジ見ながら、秋が言った。
「恵理夏ぁ~~。それ、今度…私もしてみたぁ~い。」
とっさに「せんでいい!!」と、叫ぶ。
そんな俺を横目に「いいよ。今夜、手取り足取り教えてやる。」と、聴こえるように。
秋に、恵理夏は色気たっぷりなウインク…。
悪魔のささやきに、成長を続ける秋…。
君は純粋だったよね?どこまで毒されてる??
俺は、純粋な女神のような君が、好きなんだ。
出来れば、変わって欲しくない。
でも、言える権利も…止めることも出来ない。
「はぁ…」
「ふぅ~~ん。浩、征服欲が強いのか?」
俺の様子を見ていた恵理夏が、恥ずかしげも無く言った。
「ごほっ…けほけほ…」
俺の頭の中まで、読むのか…。
いや、そんなつもりは…あまり…ないとも言えないような…悪魔め…
「コスモス、待て…は教えたな?」
「うん!」
…待て??
「浩は、『待て』が好きだって。」と、最高の笑顔。
ハラ黒…【ゾクゾク…】背筋が、寒気に襲われる。
秋は俺を見て、顔を赤く染め
「浩君。イヤイヤって恥ずかしがる女の子を、強引にしたい…って人?」
……。
悪魔に、洗脳されてる!!
「男の劣情を刺激するんだ。」と、悪魔の声。
「恵理夏さん?地獄に帰れ!!」
「魔界だろ?」
ふふんと、ふんぞり返り…嫌味な笑顔。
何様だ?!
「人間じゃないだろ?」