短編集

女神降臨…行き過ぎ?


日直で、科学室の片づけをしていた俺と秋。

【ビシャッ】
水しぶきの大きな音。

まさか…
思った通り、秋が水を頭からかぶって呆然と立っている。

「バカ!何やって…」

俺の声に、何が起きたのか理解する。

「やだ…。服、濡れちゃった~~。う゛ぅ…」

近づいて、準備室に常備されているタオルを頭にのせる。

「ほら、ちゃんと…拭いて!!」

慌てて目を逸らす。
制服が透け、下着が俺を誘惑した。

「ね…色っぽい?」と、タオルの隙間から上目で見つめる。

「…ふざけんな!!絶対、お前なんかに手は出さない!」

「ちぇっ…」

気が抜けない。今のこいつに、恋?ありえない…
悪魔に洗脳されて、俺の好きな秋から遠くかけ離れた存在になってしまった。
だから、今は絶対に…無い!!

秋は、いきなり服を脱ぐ。

「ぎゃぁ!!なっ…何…やって!!」

俺は、慌てて制服を着せる。

「H!」

「はぁ?意味が分からん…。服を脱ぐお前のほうが、異常だろ?」

「チラリリズムが駄目なら、脱いでみろって…」

「誰がだ?!」

やっぱり、あの悪魔の入れ知恵か!!

「い…ひゃ…いふぁ~~」

両方のほっぺたを引っ張る。

「…恵理夏だな?」

「ち、違う…もん」

目を逸らし、吹けもしない口笛を吹くまねをする。
…ちょっと、可愛い。

いや、騙されないぞ?
いらない知恵を植え付け、俺たちの様子を楽しんでいるに違いない!
くそ~~あの女!悪魔の尻尾が見える。

「ひどいよう~。ね、浩君…」

「何だよ?」

「えと…ね。抱いてもいいよ?」

意味の分かっていないのが、丸分かりの台詞。
頭に、怒りマークが増える。

~~っ!!
苛立ち、つい…

【バシッ】頭を軽く叩く。
そう、軽く…。

小さい頃のくせだ。
…幼い時の嫉妬や苛立ち…言葉に出来なくて、出てしまう…愛情のしるし。

「…S?」

「…はぁ。」

ため息。
話を逸らそう。

「秋、これ…貸してやる。ちゃんと夜、返せよ?」

俺の制服を被せる。

「お誘い?」

どこまで洗脳??

はぁ…昔は、こんなじゃなかったのに。
…友達か。(正確には、悪友?悪魔の生贄??)

恵理夏と出逢って、純粋な初恋の君は消えたんだ。
ただでさえ、中学のとき必死で我慢していたのに…。

積極的なのは…ちょっと…いい。
いや、他の奴に見せたくない。…いや、違う…好きじゃない!!

はぁ…どんどん…消える俺の女神様…



< 113 / 130 >

この作品をシェア

pagetop