短編集

確かに…堕女神…。どうして、秋から友達になった?
何か、理由がある…か。

でも、「秋は…」俺のこと…

「何?」

タオルで、髪を拭く姿は…女神。
…クラクラする。

「いや、黙って…拭いてろ。」

片付けに戻り、一人作業を進める。
好きでもない男を、誘惑したり…する…?
いや、秋は…知らない。自分の言葉が、何を意味するのか…。

あの悪魔…

「浩君…」

「何だ?」

「…今の私は嫌い?」

…え?…
秋の方を見ると、真剣な顔で…机の上に三角座り。
スカートの中が、見えそうだ…

【ガシャッ】
手に持っていたビーカーが、床に落ちる。

「ばっ…何を急に。」

視線を慌てて逸らし、割れたガラスを集める。

「ね…嫌い?」

【ツキッ…ン】

「痛っ…つ~~」

焦り、ガラスの破片で指を切った。

「バカ…」

血のにじむ人差し指を、秋が口に含み…舐める。

「秋…ちょ、汚いか…ら…」

目を閉じ、俺の指に…

「~~っ!!」

やばい…何かが、やばい!!
これは、天然だ…

「いいよ、もう…大丈…っ」

目を上目に、口から出された指を…ペロッ…
頭が、ぼ~っとする。

「…水…」

「…へ?」

「水で洗って、バンドエイド貼るから。」

水で流しながら、少し…残念なような…
絆創膏を貼る前に、舐めたい…。

いや、何を…変態か!!小学生の笛を舐めるみたいな…
俺の頭も、おかしい!
きっと、悪魔に…知らない間に洗脳されているんだ!!

「浩君、返事…聞いてないよ?」

【ドキッ!!】

心臓が跳ねる。
ドキドキ…

「き…嫌いじゃない…ぞ?」

泣きそうな顔に、つい…
そして、俺の返事に最高の…女神の笑顔。

「…嬉しい!じゃあ、このまま良い女になるね!!」

「ちょっ…」

無邪気な笑顔で「ん?」と、首を傾げ…俺を見つめる。
何も…言えなくなってしまった。

良い…女??秋、嫌いじゃないけど…
前のほうが…と、言いたいのに。言葉を飲み込む。

ガラスの破片をホウキで集める秋は、背中を向けた。

「浩君、好きよ…」

小さい声で、今…確かに…

「え?何…聴こえない…もう一度言って…」

空耳じゃないよな?

「ん~?別にぃ?…何も、言ってないよ?」

しゃがんで、ガラスを塵取に入れながら答える。
怖くて訊けない…

「そう…か。ごめん…」

「…変な浩君。」

塵取の中のガラスは、燃えないゴミの中に…
音を立てながら…落ちる…。


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