短編集

男…ですか?


「浩、普通さぁ~~?私、でしょ?」

「うるさい、黙れ!」

殆んど無傷…どんだけ、ケンカ慣れしてるんだ?!

「酷い…か弱い女の子に。泣きそう…」

「俺が、泣きそうだ…」

奇利は、すっきりした顔…で、笑う。

「浩君、苦しい…よ。」

俺の腕の中、顔を真っ赤に染め…ジタバタ。

「秋、俺…お前のことが好きだ。」

「…ぇ…?」

ぷくくっ…

「…え?何、嘘なの?ね、…浩君…嘘…?」

俺は、間抜けな声と可愛い顔に…笑っただけ。
まさか泣くなんて…

「ごめん…違う、嘘じゃない。」

「…うそぉ~~。…っ…ぅ~~。」

「あぁ~~あ、泣かせた!いけないんだぁ?」

「…まだいたのか?見物料取るぞ。」

「えっ、それは困る。じゃ、秋…頑張れ!」

逃げ足の速いこと…。

「…恵理夏の言ったとおりだ~~。」と、涙目で…女神の微笑み。

恵理夏…の、言うとおり??
いや、それはないだろ??

「へへっ…浩君、私も…好き…。」

あぁ、嬉しい…幸せだ…。
女神は、目を閉じ…俺の唇を待つ。

【ゴク…ン】

ドキドキ…
そっと重ねる。柔らかい…
目を細め、手を秋の後頭部に回し…引き寄せる。

「…んっ!?」

柔らかい…舌が、俺の唇に触れる。

!?

つい、理解できず…唇を離す。

「…?浩君?…何か間違った??」

だ…堕女神ぃ~~~~!?
恵理夏…あいつ、あの、悪魔…かっ!!

口の残る感触で、俺の理性と…何かが戦っている。
畜生ぅ~~!!

「秋、いい?今後、恵理夏の言うことを聞いてはいけません。」

「イ・ヤ♪」

…イヤって…言った?

「だってね?この告白も…恵理夏のおかげなのよ?」

「……。」

まさか、はめられた?
計算済み…かっ!!

「ふふっ…私も、よく分からないけどね?恵理夏が、奇利について行きなさいって!」

…あいつ…わざと、秋を危険な目に??
いや、奇利の強さを知っていれば?いやでも…。あの悪魔っ!!

脱力感に、いろんな考えが頭をグルグル…頭痛がする。
そんな俺の隣を、女神の笑顔で歩く秋。


「あらぁ~~。上手くいったのねぇ。」

悪魔の登場。

「…恵理夏、本当は…秋に召喚されたのか?もう役目は終わっただろ…魔界に帰れ。」

冷たい目の俺に、ニヤリ。

「ふふっ…浩、お願いが叶ったら…あなたの魂をもらう約束なの!」

「…おいおい…」



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