短編集

天然…?


生徒会室から追い出された。

暗い顔の蒼を横目に「ね、私の料理が不服なの?」と、問うが返事はない。
ただ、ドアの向こうで…「堕…女神…」と、聞こえた。

堕女神…?秋のこと?
…ま、いいか。授業に遅れるし!

服を正し、廊下を歩いて教室に戻る。


「で、どうだった?」と、恵理夏。

「…?あぁ、何か自信がなくて落ち込んでる?」

恵理夏は、嬉しそうに微笑んだ。
何故?彼氏が落ち込んでいるのに、笑う??

「くすっ…ね、本気?」

「うん?恵理夏じゃないと立ち直れないのよ。慰めてやって。」

「くすくす…慰めに、行ってたんじゃないの?」と、奇利。

「…ん?私では、役不足だった。けど、どうして…私を連れて行ったのかな?」

綺麗な二人は、爆笑。

「朱理、来いよ…」

浩が私の手を引いて、非常口から外に出る。
秋は、手を振っていた。

…??

「はぁ…。やっぱり、面倒臭いことしてるんだな。」と、ため息。

「?」

見上げる私に、苦笑い。
で、忘れていた眼鏡をかけてくれる。

「あぁ、どうりで視界がかすむと!ありがとう、浩。」

「いや…。あいつ等、面白がってるしな~~。ふう…生徒会長に、何された?」

「…Hっぽい事。でも、貧乳の私では…役に立たなかった。落ち込んだまま、あいつ…大丈夫かな?」

私は、普通に答える。
面白いことを言ったつもりはないのに、浩まで爆笑。

「ね、何が面白いの?蒼は、真剣なんだよ?相手を間違えただけで」

嫌いだけど、真剣に生徒会長しているアイツは…
あれ?何故に、私が奴の話を…

「天然…?」

…?
あまり、人とは接してこなかったが…天然とは、初めて言われた。

「さぁ?」

「…堕女神…天然の堕女神…か。作ったのは、環境か?遺伝か…自分自身?」

浩は、蒼と同じ『堕女神』と、私を呼ぶ。
天然の…堕女神…何だ、それは??

【キ~ンコ~ン…】始業のチャイム。

「浩、私は…堕女神でも、女神でもない。私は私だよ!」



その日は、何故か…目が冴え、寝付けなかった。
深夜、物音がする。

あれ?…まさか、蒼??
あいつ、いつもこの時間に入ってきてたの?
しかも、窓…屋根を伝って??

危ない奴だな~。
けど、鍵はどうするんだろ…?

寝たふりで、様子を見てみるかな。

【トントン…トン…トン…】
窓を何度か、リズミカルに叩く音。
【カチャ…カラカラ…】

マジで?!

「嘘でしょ!!」

思わず飛び起き、聞いた音が本当か確かめる。
窓は開いていて、蒼がビックリした顔で窓に腰を落とした。

「…なんて、簡単に開くのよ。蒼…今後、禁止!全く、この音に起きない私もどうかと思うけど…」

「ねぇ。今の状況は、分かってる?今日あったこと、覚えてる?」

今日、結局…晩御飯には来なかった。
あぁ!!


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