短編集

不器用で…


「「生徒会長…」」「蒼…」「「「のこと、好きなの?」」」

3人の声が重なる。

…?

「嫌い。」

私の言葉に、それぞれがため息。
この答えではない?

「好きじゃない。」と、言ってみるが…反応は同じ。

浩は、苦笑いで訊く。

「どうして、嫌いで…好きじゃないの?」

どうしてか?

「私の胸、貧乳って言うから?」

うぅ~~ん?
ちょっと違う気がするけど…一番近いかな??

「…貧乳は、いいと思うけど?」

ボソッと、小さい浩の声。
恵理夏が聞き逃さなかった。

「え?何、何て言ったの?聴いたぁ~~?秋、お前の胸は良くないってさ!」と、秋の胸を両手で包む。

「くすぐったぁい…やぁ~~」

浩は恵理夏の頭を軽くはたいて「それは俺の!こほっ…秋のは、これでいいの!」

「やぁら~~しい~~」

ヤラシイ?貧乳が??何で!?
理解できない私に、恵理夏が囁いた。

「蒼に教えてもらいなさい。くすくすくす…優しく、分かりやすく教えてくれるわよ?」

…そっか、教えてくれるのか。
浩は、私から視線を逸らし…何かを、言おうとして止めた。

??
変な浩…。

「いい?貧乳の良さは何?分かるように、丁寧にお・し・え・て!…って言うのよ?」

「…恵理夏、そうやって…秋に吹き込んでいたのか?!この、悪魔!!」

…悪魔?
訊き方まで教えてくれて、優しい…のに??

「くすくすくす…生徒会室に、盗撮機しかけなきゃ。くくっ…奇利なら、協力してくれるかしら。ふふふ…」

楽しそうな、恵理夏と…浩の叫び声。
こんな毎日も悪くはない。

「秋、ありがとう…」


朝、食べてないだろうと…母からお弁当を預かった。
生徒会室をノックする。

【コンコン…】

…返事はない。
ドアノブを回すと開いていた。

「…蒼…?」

そっと、中をのぞいて見る。
大きい机には、たくさんの書類と寝ている蒼…。

毎日、あんな時間に忍び込んでたら…寝不足になるわよね~?
バカだ。

近づいて、お弁当を机に置く。

綺麗な顔…。男の人…か。
さらさらの柔らかい髪…どんな手入れしてるのか、つるつるの肌。
何だか、憎い…。

「…ん…」

【ビクッ】

起きたのかと、何故か焦る。
…逃げなきゃ…

でも、どうして?
ここには、いられない…。どうして?
怖い…何が?

「…朱理…」

「…え…?」

【ドキ…ン…】

心音がうるさい。


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