短編集
違い
俺たちは、教室に戻る。
休み時間は、いつものようにコトリにベッタリ。
「お、仲直りかよ♪」
「そ。コトワが、俺のそばにいないと落ち着かないだろ?」
皆は笑う。
俺の居場所…俺達は兄弟。
同じ日に産まれた。同じお腹の中で育ったけど、同じじゃない俺たち。
コトリ…君は、もう一つ嘘を吐いた。
気が付いていないのかな?
乙姫を、好きな気持ちは俺と同じ…
『好きなタイプは同じ』だと、君が言ったんだよ。
それとも…俺に、告白させて…様子をうかがうつもりですか?
けど…乙姫は、俺達を嫌いだと言った。
イジメられていた時、俺達がいないと思って叫んだ言葉…きっと、本当…
俺達の所為で、嫌な思いをしているんだ。
帰りに、兄貴…じゃ、ない。コトリが誘う…
「一緒に帰ろうぜ!」
「うん!」
抱き着いた俺を、押しのけるのはクセ…だよね??
歩きながら、たわいのない話を続ける。
「コトリ、あの…」
「しっ、他の誰かが聞いていたら、嫌な思いをするのは誰だ?」
やっぱり、乙姫のことが好きなんだ…
なのに、どうして…
家に着き、コトリが部屋に入るように言った。
「…いいの??だって、何年も入っていないよ?」
多分、小学校のあの時から…
「作戦会議をしようぜ♪」
違いを知るのは、面白くも…怖くもある。
何を企んでいるのか…ニヤリ…
【ゾクゾクッ】
コトリの笑顔に、寒気を感じた。
「ふふふ。これ、やるよ。とっておき♪でさ、こういうのはどうだろう?」
「待って、乙姫は俺たちの被害者で…嫌っているんだよ?」
しまった…
好きな子から、嫌われてる、なんて…言ったら…
「ぷくくっ。馬鹿だね!じゃ、賭けようぜ。俺の言う反応なら、俺の作戦を継続しろ!嫌われても…な。どうだ?」
「嫌われてもって…」
「何だ?昔は、よくやったろ…懐かしい思い出…そうか、兄貴なんて呼ぶぐらいだもんね…コトワって、冷たい。」
「わぁあ~~??待って、冷たくないよ!!分かった…だって、もう嫌われてるのに。そんな反応が、あるわけないよ。」
「じゃ、勝負♪くふふ…作戦を覚えてね!」
嬉しそうなコトリに、俺も嬉しくなって…作戦にのってしまった。
ま、実行に移すなんて…頭になかったけど。
うさぎは…耳をふたつ持っていた。
近くにあって当然な耳…
しかし、俺達は人間だ。
うさぎじゃない…うさぎじゃないはず…
獲物となったのは、乙姫の方…