短編集
「あの、それは…誰のこと?」
「コンキチ…」と、俺を指差す。
人を指差すな…
違う、そこじゃない。
「俺は、紺碧(こんぺき)と書いて、“こうき”だ。」
「…コンキチ。授業に出て♪」
人の話を聞かない奴だな…
「い・や・だ♪」
「じゃ…お願いを聴いてあげる。ね?何でも、いいよ?」
目を輝かせ、可愛く俺を見つめる。
…小学生…。
「嫌だ。」
「そうだ!彼女になってあげる!」
…あげる??
「ふっ…冗談は、寝て言え。俺に構うな!」
「コンキチ、私のこと好きでしょう?」
しがみついて、顔をすり寄せる。
それを押し退けながら。
「俺は、大人な女性が好きだ。ナイスバディのお姉さまがね!」
「…胸は、Dカップあります。」
……。
「いや、待て…お姉さまが良いんだ。」
「Dカップ…」
D?って、どれくらいだ??
視線を胸に、服の上から想像してみる。
いや、待て…
「嘘だな?」
そんなに目立たない。
「むぅ~~!!」
ガシッと、俺の手を持ち胸に当てる。
【ふよ…よんっ】
本物だ…
「目立つのが嫌なのもあるけど、自分に合う制服が無いだけだもん!!」
違う…話が、ずれてるぞ?
胸は重要だが、付き合うとかの話じゃなかったはずだ。
「わかった。授業に出てやるから、俺に構うな。」
「…コンキチのばかぁ!!」
…何が不満だ??
「私のこと、嫌い?」
潤ませる目は、何故かドキドキする。
「えと、ドジ子…」
「柚子!!」
「…~~っ。柚…」
「何?」
子犬にしか見えない…
「俺は、好きな奴がいる。」
「薬局のおねいさん、かな?」
…「なっ?!!」
そう、偶然入った薬局で一目ぼれだ…
「…ソレは、私の母です。将来、私は母のように育ちます。さぁ、今から手を付けて♪ね?お父様と再婚よね…不良の真似も、その反抗のつもり?馬鹿みたい!!」
【グサッ…】
男の心は、ガラスのように簡単に壊れるんだ…優しくしてくれよ。
「てか…じゃぁ…兄妹?」
「違うもん!姉弟だもん!!私のほうが誕生日、早いんだから。」
マジかよ…
「柚…俺、無理だ。」
彼女のように育つとは、想像ができない。
綺麗な人…胸は、同じか…それ以上…
「どこを見て、迷ってるのかな?…もういい!!くすん…助けてくれた時、私の心を持っていったくせに…嫌い!!死んじゃえぇ!!」
…その捨て台詞はどうなの??
走り去る彼女が必死で、つい…傍観していた。
…助けた??いつだ??
最近、彼女に似た可愛い女の子を助けた記憶が…ツインテールではなかったが、髪が乱れていた。
乱暴な3人組…全部倒して、助けたが。
それか??
待て、混乱してきた。まるで迷路だ…
柚が俺の妹になる?
【ブッ】
いきなりの鼻血に、慌てる。
柔らかい胸の感触に、情けない想像…
駄目だ。オヤジの結婚に反対だ!
俺の苦悩は続く…迷路のように。
end