短編集
孤独色
孤独な世界…
俺を恐れ、見下した眼…敵意の塊。
心許す場所もない。
そんな世界に、君が現れた。
「よぅ、ナンパに良い相手を選んでシツレンですかぁ?」
ボコボコに殴り、蹴りつけ…
地面に転がる負け犬。
「…がはっ…けほ…っ。」
良い相手…コイツ、何か知ってるのか?
髪を掴み上げ、問いただす。得たのは、単純じゃない。
勝田 睦(かつだ むつ)
綺麗な彼女を知らない奴は、いない。
そして、女子生徒の嫉妬に居場所をなくし…常に痴漢との戦い。
俺と同じ…孤独色…
彼女の降りた駅へ行き、近い場所で待ち伏せる。
長い時間…待つ。
姿を見つけ、心はまた真っ白で…ただ近づいた。
用意した言葉もなく…用意していても出ないであろう言葉…
「何か用?」
仁王立ちの彼女…存在に、高鳴る胸…
サラサラの髪に、手が動く。
指を絡め…
【ジャキンッ】
……。
目が点
俺の手には、指に絡まったままの髪。
彼女の手には、はさみ。
こんなことは何でもない…そんな表情。
「くれてやる!二度と私の前に現れるな!!」
思考の止まった俺を残し、短くなった髪を揺らしながら去って行く。
【ゾクリ…】
感じた感覚が何なのか…分からず、ただ…立ち尽くした。
家に帰り、手にあったそれを小袋に入れた。
家までの道のり…それは、ずっと指に絡まったまま…
興奮する。高揚感…
何だ、この気持ち…恋?好き?そうなのか?
小袋を握り締め、胸に導く。
彼女の匂いがするような気がする。
ほんの少しの髪は、匂いを放っているとしても微かだろう。
ざわめく…衝動…