短編集
同色系
ストーカーのように、次の日も同じ場所に立つ。
小雨の中、傘はない…足元に子猫。
手には、何故か牛乳…座り込んで、手のひらをお皿代わりに…
【ドゲシッ】
【ゴッ】
…「痛い…」
「何を、やってるんだ!!」
何って…
「お前が、蹴り飛ばして壁にぶつかって…痛いおでこを撫でていますけど??」
小雨なのに、彼女は傘を閉じた…?
「誰が、てめぇのことを訊いた?ボケが!!あほっ死ね!消えろ!!!!」
水たまりに膝をついたままの俺に、上から罵声…
しかも、閉じた傘を振り上げる。
殴るのか??
防御態勢に入った俺に、傘を投げつけた。
「邪魔だから持ってろ!…汚い手で触りやがって…やる。戻しには来るなよ?来たら通報だ。」
俺を視界に入れず…
子猫を抱え、俺を残して去って行く。
「おい!」
呼び止めた声に、彼女の足は止まるが振り返らない。
「子猫に、牛乳をやるバカとは話さない!」
後ろ向きで叫んだ声は…いつもより優しい気がした。
本降りになったのは、数分後…
彼女の傘…俺は差さずに帰った。
彼女も、きっと…濡れているだろうから。
次の日は、馬鹿なのに風邪…
めったにない病気って、辛い。
熱にうなされ、想いは熱く…手には、お守り。
彼女は大丈夫だろうか?
あの子猫を飼うのかな?…子猫に、牛乳…駄目なのか??
今更、記憶に疑問と笑みが溢れる。
あやふやな意識の中、夢心地…
これが、恋?この気持ちが?
好き…なのか…な?