短編集
インテリ系ヤンキーは、お嫌いですか?

インヤン

元木 竜佳(もとき りゅうか)勝田 睦(かつだ むつ)の子。
万(よろず)



「もしもし、万?助けてくれ!警察に追われてるんだ。……ちょっと欲しい物をくすねて、ヘマしちまった。てか、今はそんな事どうでもいいだろ。逃げ道を教えてくれよ。」

「バカか、今すぐ捕まれ。万引きは窃盗罪。泥棒に加担するつもりはない。」

「そんな。俺……」

「場所は何処だ?必ず行ってやるから。追いかけている警察に謝って補導されろ、今すぐ!」

…………『今時、そんな助言をして本当に来るなら大したものだな。』


学校は普通科で、成績の上下は落差が激しい。
やる気のない、いわゆる不良がクラスに数人。

大抵は係わりを極力控えるような周囲とは別に、成績が良いのに不良とも仲良く接する頭脳派のヤンキー……
俺は、その部類なのだと言う。

父が昔、有名な不良で喧嘩も強かったらしいが……
母と出逢って、それが何故か悪化したのだと言う。

母は苦笑しながら、自分を護る為に必要だったと懐かしそうに告げた。
周囲(主に母方)の反対にも負けずに結婚、産まれたのが俺。

「万(よろず)。お前、マザコンって本当かよ?」

失礼な奴だな。
確かに母さん以外の女には、まだ興味がない。

「周りから言われて、否定するのも面倒だ。家族写真を持ち歩く様になったのも、それが原因なんだけどな。見るか、俺の母さん。」

面白おかしく冷やかす奴らに、家族写真を見せる。

「……あぁ、これならしょうがない。てか、これは有名な竜佳(りゅうか)さんじゃないか!」

ヤンキーの歴史に残る父に、話題は奪われる。

「元木って名字で分からなかったのか、お前ら。」

「ふざけんな!俺ら不良の憧れ、竜佳さんの子供がインテリとか認めねぇ!」

高校生の子供がいるにしては見た目も若く、学生時代には綺麗で有名だった母……
父は、そんな母に一目惚れしたらしい。

結局、似た者同士だった二人……

「あれ?そう言えば……この人に似た美女を最近、どこかで見たような気がする。」

まさかな。
母さんのような美人が近くにいるなんて、信じられない。

「何だよ、万。本当だって!この前、お嬢様学校の近くだったかな……俺の情報、きっと間違いない。」

何だよ、その『きっと間違いない』って。

俺はヤンキーとつるむのが嫌いじゃない。
下手に頭の良い奴が考えるあくどさに比べれば、裏も無く単純なこいつ等と居た方が気は楽だ。

だけど、基本的には両親に似て一匹狼。
真面目にも、ヤンキーにもなれない半端者。


学校の帰り道、不良たちの集まりに誘われたが、それを断って家に真っ直ぐ帰る。
今日は、来客があるから早く帰れと言われていたんだよな。

周りから結婚を反対された両親に来客……
一体、誰なのか見当もつかない。


「ねぇ君、可愛いねぇ。俺達と一緒に遊ばない?」

もちろん、俺に対する言葉ではない。


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