短編集
~引かれて落ちる~
朝、学校の廊下。
教室に辿り着く。
授業が進み、お昼休み…
廊下に出る。…静かな道のりは、順調に購買へ。
コロッケパンを手に入れ、階段を上る。
屋上には、誰もいない…
睡魔に誘われ、眠る一時に物足りない平穏。
横になった俺に、寄り添うものなど無い。
起き上がり、教室へ戻る。
…そして、放課後…
コンビニに寄り、立ち読みをせずに炭酸を手に取る。
一瞬、頭を過る存在…そこには、いない。
エクレアにも手を出し、レジに並ぶ。
家までの道のり…
いつものようにエクレアを口に入れた。
甘さが足りない…昨日の甘さは、どこに行ったんだ?
この求めるモノは、何…?
足りない…サミシイ…
家の前まで来たのに、俺は方向を変えて走る。
向かう先は、学校…
下校の人波を逆行しながら避ける。
この中に、彼女がいたかもしれない…そうなら、戻ればいい。
今は、探すのに必死。
彼女を知らない…
どこのクラス?どこに行けば、会える?同い年なのか??
校内を走り、隅々まで探す。
屋上にもいない…
校舎から出て、裏庭に向かった。
あの大木に近づき、見上げる…
いた…胸に込み上げる熱い想い。
「…巳羽…」
かすれるような声が、自分から出ているのだと思うと泣きそうになる。
反応がない…
いつだったか、彼女をこの木に残して行った。
突き動かす想いに急かされ、木に登る。
夕暮れの淡い光が、彼女を照らす。
「巳羽…?」
頬に手を当てると、反応が返ってきて安堵する。
温もりと柔らかさ…
覆いかぶさるように、彼女に身を寄せた。
そっと唇を重ねる。
「…俺も、好き…」
目を開けた巳羽は、俺をただじっと見つめる。
不安に押しつぶされそうだ。
今までにない感情の波に呑まれて…口を開くと、驚くほどの言葉の嵐。
「もう、俺の事を好きじゃなくなったのか?今日、どうして来なかったんだ?俺…どうすればいい?」
自分の表情なんか分からない。
彼女は、やっといつもの笑顔。
「…あなたを飼うなんて、嘘よ。」
…ウソ…
頭が真っ白になり、冷たい何かに突き落されたように凍てつく身体。