短編集

渡さない!:side南斗


高校に入学したばかり。
そろそろ、幼馴染から抜け出したい…そう思っていた。

日直で、先に帰っていいと言われ…軽いショックを受ける。
で、諦めの悪い俺は玄関で待っていた。

トロイから、時間がかかるよね?ケ
イタイを開いて時間を見る。

そろそろかな?
そんな俺に、会話が耳に入る。

普段、他の奴の会話なんか耳に入らないけど…
「櫂里」この言葉に反応した。

「…櫂里ちゃん、可愛いよな。俺、今から告る!…~…」

だと?!櫂里は、俺のだ!!
5歳で初めて逢った日から、好きだ。一目惚れだ!

畜生…あの日から、どれだけの努力をしてきたか。
俺は、教室に向かって走った。

絶対に渡さない。櫂里が何と言おうが、俺のだ。
お前に合わせて我慢したんだぞ?…伝わらないけど。


櫂里は、教室にいた。
丁度、かばんを持ち上げたところ。

教室は、一番端で…あいつがもうすぐ来る。
櫂里は人がいいから、『話がある』なんて言われたら、何も知らずについて行くかもしれない。

くそっ!
あ…掃除道具入れ…隠れるか?

俺は、説明もせずその中に一緒に入った。
暗い…。櫂里は、不思議そうに俺を見る。

可愛い唇が動く

【ドクンッ】
つい、指で言葉を止めた。

【ぷに】

や、やわらけぇ~~~~!!
今、櫂里に話をされるとあいつに見つかってしまうし…。

「し…黙って。ね?」

耳元に、小さい声でお願いした。

【ふわっ】

……。
この匂いは、櫂里の…ですよね??

何、この…やばい、ちょ、静まれ俺の心臓。
聞こえる!櫂里に聞こえる!!

「…いないぞ?もう、帰ったのか…」

げっ!
思わず、両手で櫂里の耳を塞いだ。

…?!
押さえ方に勢いがあったのか、櫂里の顔が上に向いて…視線が合う。
可愛い眼…潤んだ唇。

まるで…『いらっしゃいませ』と…聴こえる。
もちろん、俺の欲望が囁いた幻聴だ。

その唇が動いて、言葉を出そうとしている。
え?押さえられない??

『口があるだろ』

ですよね?
誘われるまま、言い訳をしつつ…唇を重ねた。

音なんか聞こえない。
うわ~~~~~。柔らかい!!幸せだ…

櫂里…好き…て、自分の欲求だけでキスをしてしまった…

痛い、心が痛む。
なのに、離れたくない感情が…俺の邪魔をする。

どっちが本音だ?
唇を重ねたまま、そっと目を開けてみる。

予想通り、櫂里は驚いて目を見開いたまま…俺を見ている。
唇を離す…


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