短編集

声に反応して、睨んで振り返る。

「ぷっ。お前だけだな…声でも、俺らを区別できるの。」

褒めているんだろうか?
けど、今はウザイだけ。

「白海!酷いよ…俺、今日…」

ぐあぁ~~!!増えた!!
紅星、今日…休みじゃなかったのか??

「じゃ、二人とも…バイバイ!」

こいつらの所為だ…平穏な学校生活を失った。
幼なじみってだけで、絡まれ…二人の事で、質問攻め。
仲介に、手紙やプレゼント…いい加減にしてくれ!!

「待ってよ、サヤカ!好きなんだ…付き合ってよ!」

突然の告白…しかも、こんな廊下で。
噂になったら、どうしてくれるんだ??

睨んで視線を向けたが、顔を真っ赤に…真剣な表情。
しょうがないなぁ…

「紅星、行こう…別の所で話がしたい。」

紅星は、うなずいて歩き出す。
きっと、私の返事を読み取ったのもあるんだろうな。

苦笑した表情に、胸が痛んだ。

「待てよ!」

方向を変えた私の手を、白海が握る。

「時間がないし、目立つのはイヤ。」

白海の手を振り払い、紅星が歩く後に付いて行く。

付き合うって何だろうな…
必死で、想いを伝える紅星…心は動かない。
嬉しいのはあるけど、複雑…友達の好きな人。
恋愛対象外…

「ごめんね。紅星の気持ちは嬉しいけど、大事な幼なじみ…友達以上に思えない。」

「そっか…」

沈む表情に、胸が苦しい。
応えられないのに…優しさも示せない。不器用だ…
紅星は、一緒にいる時間が長すぎた…

教室に戻り、浅黄の顔を見るのも…目を合わせるのにも力が入る。
言うべきなのだろうか…私の気持ちであれば言うべきだと思う。
私が紅星を好きで、付き合うなら…でも、私は振った。
私に振られ、傷ついた紅星について…何が言えるだろう?
もし、浅黄が知ったとき…正直に言おう。
それまでは、言わない…

他人事だった恋路が、自分に絡む。
私も、誰かを好きになれば…それは、変化するのだろうか…?


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