短編集
レッスン1
やはり、成長するのは恋の影響だろうか?
好きという感情は、どのように生まれるんだろう…
紅星は、迎えに来なかった。
安心したような、寂しいような…複雑な想い。
玄関を出て、家の前に白海が仁王立ち。
「…おはよう。先に言うけど、一緒には学校へ行かないよ?」
冷たく言い放ち、目の前を足早に通り過ぎようとした。
そうだよね、仁王立ちで待っていたんだ。そう簡単には、通してくれないよね。
手を捕らえられ、鋭い視線の睨み。
「何?私は、白海に用事なんてないよ。」
手を払おうとしたが、力が違う。
いつから、差が出たのかな?
「どうして、振ったんだ?」
紅星から聞いていないのかな?
不思議に思う。小さい頃は、次の日に筒抜けだった。
「紅星が言わないなら、私も言わない。」
睨んだ視線に、対抗するように目を向けた。
「違う、紅星には訊いていない。俺が知りたいのは…清花の気持ちだから。」
私の気持ち?同じでしょ。どう違うの?
紅星の口から出る言葉も、私の出す言葉も一緒…じゃ、ないか。
「紅星には、言っていない事がある。」
白海は、驚いた顔
「私の友達が、紅星を好きなの。その時点で、紅星は恋愛対象外。真剣な想いに、私は…そんな事、言えなかった。」
何故、素直に白海に告げたのか…
胸に閉じ込めた思いが苦しかったのかもしれない。はけ口が欲しかった。
丁度いい存在…だった?
信用して、良かったのか…惑う。
視線を逸らした白海は、眉間にシワ
「お前は、友達が紅星じゃなく…俺を好きでも、同じだったのか?」
今までに見たことがない程、苦しそうな表情。
泣きそうな…そんなギリギリ。胸が騒ぐ。
「そうよ、私は…誰も好きじゃない。自分が先に、好きになったとしても…きっと友達を応援する。そんな曖昧な気持ちで、本気に応えられない。」
手が離れ…私は、逃げるように走って学校へ向かった。
白海が、私に問う意味も…答えに苦しそうな表情を見せたのも、理解できない。
したくなかった…
逃げたい衝動に、流されるように走る。
忘れよう…自分では、どうにもできない。解決しない。
目を閉じて、ただ…時間が過ぎるのを願った。
時と共に記憶も、思いも忘れると。