短編集
何も変わらない日常。時間は戻ることがない。
授業から得るのは増える知識。
皆と同じ言葉を聞くのに、自分には残らない記憶。理解力の差。
分からないまま放置した疑問と、どうしても理解したいと願い、負けず嫌いになるほどの探究心。
人の想いも同じだろうか。
紅星が優しいのを知っている。浅黄は、どこに惹かれたのかな?
好きな人。好きlike。好きlove。同級生。友達。彼氏。夫。父親。
選んだ相手は変わらないのに、想いと環境で変化する名称。
淡い…白濁の想い…
大人になれば、自然になる?
戸惑いと不安と、取り残されたような孤独。
大切なモノは、変わらずに居てくれるだろうか?
授業が終り、掃除分担の場に向かう。
足取りは重い。
校内では歩いても、さほど景色に変化はない。
廊下と教室。ロッカーと窓。水場と階段。行き止まり…
「清花、話があるの。」
浅黄の沈んだ表情を見て、自分の心音が早くなる。
逃げてきた現実に、浅黄の理解は得られない。そんな気がする。
「何?」
向かい合い、視線を合わせた。
「…紅星君の告白は、本当なの?」
「本当だよ。」
私は即答した。
嘘は吐けないけど、必要以上の言葉を出すつもりはない。
言葉を多くして、言い訳をしても現状は変わらない。
浅黄の求める答えは、決まっている。
結論さえ、間違わなければいい。
浅黄は、涙を堪えて口を閉ざした。
「浅黄、紅星の想いは私にあったかもしれない。でも、その想いはずっと続くものじゃない。」
そう、人の感情なんて揺れやすく…激動するんだ。
築いてきたものも、覆すほどに…。
「私の想いは、ずっと続くわ。」
涙を零しながら、真っ直ぐ向けられた視線。
「そう。より強い想いが、覆すと信じている。私の弱い、幼馴染の延長で友達から変わらない気持ちは、その他大勢と同じ。私と紅星、私と浅黄に変化はないよね?」
涙の止まらない浅黄に、私は微笑みを向けた。
浅黄は、私に抱き着いてくる。
私も浅黄を抱きしめ、慰めるように背中を撫でた。
淡い恋…先も見えず、不透明な未来に思いを馳せて…
紡ぐ不確かな関係を、強固にする言葉。
今まで、紅星と白海の係わる想いに…多くを失った。
学んだ事が成長を表す。
淡い恋への抵抗……