短編集

レッスン3


幼い恋心は、純粋でありながら、時に自己中心的。
白濁…淡い彩り…自己完結の甘い時間と、夢見る未来。
現実を見ているようで、見ていない。

それでいい…今は……


いつもより早く起きて、家を出た。いつもと違う風景が見えるような気がする。

教室に荷物を置いて、校内を歩くことにした。
数人に捕まって、同じ言葉を何度繰り返すのか。

変わらないと思っていた何かに、心が反応する。
白海への気持ちが、曖昧で…否定的な言葉を出す度に、痛みを伴う。
自覚する想いが甘い…白濁……

窓から外を眺め、登校する人を観察する。
大勢…知っている人と知らない人…


「何を見ているの?」

声に反応して、目を向ける。

「転校生…学校は慣れた?」

転校生の物珍しさも、落ち着きだした頃よね。
私の質問に苦笑を返し、私の横に立って窓の外を眺めた。

「ふうん。この高さでも、十分見渡せるか。時間あるよね?」

脈絡のない会話だね。人の事、言えないか…
ため息が出る。

「月川くんだっけ。友達は、出来た?」

「出来たよ。紅星と仲良くしている。最近の話題は、白海と君が付き合うかどうか。」

お互いに、外を見つめたまま会話を続ける。

「そう。男の子は、楽しそうでいいわね。」

「そう?女の子も、楽しそうで羨ましいよ。」

そうかな?楽しそう?
恋に必死で、可愛い表情を見せるのは楽しそうだと思う。
だけど、失恋や辛さ…嫉妬や悲観的なのはドロドロで面白くなく、むしろ害になる。

「昨日、白海と一緒に帰ったの。楽しいより、少し…苦しい想いをしたわ。」

「あぁ、それで。傘を持っていたのに、ずぶ濡れで…今日、白海は休みだよ。」

ずぶ濡れ?あの後、一体…何があったの?
私の家から白海の家までの距離で、ずぶ濡れにはならない。
どれほどの時間、雨の中に居たのだろう。

「ふふ。気になるの?それは、友達として?幼馴染として?それとも…恋に似た感情から?」

意地悪な質問だと感じる。
もう、自覚があるんだ…それを、実感させるのは止めて欲しいな。


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