短編集
事件と伴って
「雅之!良かった、生徒指導の先生が探していたんだ。全く、生徒会長が何をやっているんだよ。どうせ、昨夜の事でも嗅ぎ回っていたんだろうけどさー。副会長の俺の事も、考えてくれよ?」
この口早に話すのは、俺の友達で福島 圭大(ふくしま けいた)。
「圭、顔がニヤケているぞ?爽やか少年が売りだろ、引き締めろ。」
鮫島先生に狙われたのは、俺だけじゃない。
圭が、どうやって彼女を かわしたのかは知らない。
底が読めないコイツも、俺にとって興味の対象。
「ん?クスス。そんなに見つめないでよ。ホント、年に似合わず、切れ長の目で良い男だよねー。惚れちゃうよ?」
ウソツキめ、一途に見つめるのは年上の女性だと知っているんだぞ?
情報は、俺の方が持っているんだからな。
「で?情報なんて、得られなかったでしょ。お楽しみで、雅之は経験豊富になっちゃったのかな?」
なるわけがない。
口を閉ざしたまま、無視して廊下を歩き続ける。
「生徒会長様は、ムッツリなの?」
わざと苛立つ言葉を選んでいるよな、コイツ。
「圭、経験を積んだと言えば良いのか?」
歩きながら、視線も向けずに言い放った。
「面白くないよ、もっと色恋に華を咲かせようぜ?」
何だ、恋の相談に、自分がのって欲しいだけか。
素直じゃないよね、コイツも。
少しずつ理解できてきたのが嬉しくて、笑顔を圭に向けた。
パシャリ……
圭が携帯で俺を撮影した音に歩行が止まり、思考も停止。
「クスス。お、ば、か、さ、ん!」
苛立ちに、我を忘れて圭の首を絞める。
「くるしっ、ちょ、マジで!やめ、ぁ、ん」
気持ち悪いヤツだな、相手にするんじゃなかった。
圭から携帯を取り上げ、削除しようとすると、携帯にはロックがかかっていた。
「パス、知りたい?画像、消したい?ね、ね、どうする?」
ウゼェ!!
携帯を圭に放り投げ、無視して歩き出す。
「雅之は冗談が通じないし、無口だし、つまんないよー。」
後ろからウルサイ圭よりマシだ。
職員室に入り、生徒指導の先生を探す。
先に見つけたのは、先生の方だった。
「お、探してきてくれたんだな。圭大、悪いね。で、どこにいたんだ?生徒会長様は。」
どこにいたか?
図書室で、鮫島先生と、危険な世界。言えるわけがない。
「生徒会長様は、校内の見回りでございましたよ。ま、オモテになりますので?先生も、大目に見てやってくださいませ。」