短編集
ニヤリと、間に入った圭が誤魔化してくれた。
ホント、底が見えないよな。
「そうか、そうか、青春だな!恋に溺れて、学力は落とすなよー?」
ははは……
生徒指導の先生が言うことかよ。
「要件は、夜の見回りだ。」
夜の見回り?
好奇心が触発される。
「生徒会長様も、そんな子供みたいな一面を見せられるのか。あはは!良いもの見たよ、本当に。冷静沈着で頼むぞ?クク。」
話が進まないし、何だかバカにされているようでムカつく。
「先生、続きを述べてください。」
話を促す俺に、ますます爆笑。
「先生、貴重な写真を買いませんか?」
まさか、今の一瞬も撮ったのか?
コイツ、油断ならねーな。
「じゃ、写真は後買いで。要件を述べるぞ。」
買うのかよ。
好きにしてくれ、そんなもの。
職員室には、まばらに先生が数名残っている程度。
「二人は寮生だったよな、確か。実は侵入者も、寮に住んでいる奴だと予測している。」
寮生?侵入者は、俺達と同じ小学生と言うことか。
私立のエスカレータ。幼等部、初等部が同じ校舎。
隣接した学生寮は、低学年と言うのもあって利用が少ない。
中等部と高等部は、少し離れた土地に、それぞれ大きな規模で建設されている。
かなり絞られた犯人。
鳥肌が立つ。
自分が、事件の核心に近いのだと知ったワクワクとゾクゾク。
冷静沈着でなんて、いられるはずがない!
「先生、……むぐぅ?」
犯人を聞き出そうとした俺の口を、圭が塞いだ。
「はぁーい、慌てなーい!周りを見ようね、生徒会長様?」
周りは、少ないと言っても先生たちが、いる。いるよ、先生が。
ニッコリ、どす黒い何かを漂わせる鮫島先生が!!
やべ、夜の校舎で見回り中に襲われたら。
ゾゾゾ……別の寒気が俺を襲う。